HSD (Hypermobility Spectrum Disorder)とは何ですか?

HSD (Hypermobility Spectrum Disorder)とは何ですか?

関節過可動スペクトラム障害(HSD)は、関節の過可動性、安定性の欠如、怪我、痛みを引き起こす結合組織障害です。疲労、頭痛、消化器の問題、自律神経機能障害などの問題もHSDの一部としてよく見られます。

関節の過可動性(Hypermobility)とは何ですか?

関節の過可動性とは、ある人の関節が予想以上に広い可動範囲を持っていることを意味します。

多くの赤ちゃんや子供は自然に非常に柔軟ですが、成長するにつれて多くの人が柔軟性を失います。しかし、過可動性は一部の人において成人期まで続き、約20%の人々が該当します。「柔軟である」「曲げやすい」または「二重関節である」という状態は通常問題ではなく、ダンサーや体操選手などにとっては利点となることもあります。痛みや他の症状を引き起こさない過可動性は「無症状の関節過可動性」“Asymptomatic joint hypermobility”と呼ばれ、治療の必要はありません。

問題は、関節が単に過可動であるだけでなく、不安定である場合に発生します。関節の不安定性は、関節の骨がしっかりと固定されていないときに発生します。これにより、関節の亜脱臼、脱臼、捻挫、その他の怪我が生じる可能性があります。関節の不安定性は急性および慢性の痛みを引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。

関節の過可動性および/または不安定性がその人の唯一の問題である場合もあります。また、エーラス・ダンロス症候群(EDS)やマルファン症候群、ダウン症候群などの既知の症候群の一部として発生することもあります。関節過可動スペクトラム障害(HSD)は、他の状態で説明できない症状を伴う関節過可動性がある場合に発生します。HSDのある人は、関節の不安定性だけが問題である場合も、他の医学的な問題を抱えている場合もあります。

障害 (Disorder)とは何ですか?

医学上での障害とは、正常な身体的または精神的機能を妨げる病気または状態と定義されます。関節の過可動性が正常な機能を妨げる問題を引き起こす場合、それは障害と見なされます。関節の過可動性が問題や痛みを引き起こさない場合、それは障害とは見なされません。

スペクトラム障害 (Spectrum disorder)とは何ですか?

スペクトラム障害とは、経験する症状のタイプや重症度に幅広いバリエーションがある状態を指します。たとえば、HSDのある人は軽度から重度までさまざまな関節の関与を示すことがあります。また、疲労、めまい、便秘、頭痛などの他の症状を一つ、二つ、または多く経験し、これらの問題のいずれも軽度から重度までさまざまです。

二人の異なるHSDの人が非常に異なる症状を経験することがあります。たとえば、一人のHSDの人は重度の関節不安定性、疲労、自律神経機能障害を呈するかもしれません。他のHSDの人は軽度の関節不安定性ですが、重度の頭痛や消化器問題を抱えているかもしれません。両者はHSDにおいて、異なる経験をしていますが、どちらかが「よりHSDである」ということではありません。

関節の過可動性 (Joint hypermobility)はどのように特定されますか?

自分の関節が他人よりも動く範囲が広いと認識することができる人は多くいます。医師や理学療法士は、その人の関節が過可動であるかどうかを評価できます。一部の関節については、関節がどれだけ伸びるかを測定するためにGoniometer(ゴニオメーター)という器具が使用されます。経験豊富な臨床医は、他の関節が正常な可動範囲を超えて動くかどうかを判断できます。
人々は、1つ、いくつか、または多くの関節で過可動性を持っている可能性があります。関節の過可動性は、影響を受ける関節によって分類されます。

  • 全身的 関節過可動: 全身の多くの異なる関節に過可動性が存在する
  • 末梢的 関節過可動: 手や足に限定された関節過可動性
  • 局所的 関節過可動: 単一の関節または同じ領域の複数の関節に過可動性が存在する

全身性関節過可動性を評価する方法の一つにBeightonスコアがあります。このスコアは9点満点で関節の過可動性を測定します。以下の関節が検査で過可動性を示すと1ポイントが与えられます:

  • 右手小指の基部
  • 左手小指の基部
  • 右手の親指の基部
  • 左手の親指の基部
  • 右肘
  • 左肘
  • 右膝
  • 左膝
  • 下背部

Beightonスコアの陽性は、成人で5/9点以上、子供(思春期前)で6/9点以上、50歳以上の成人で4/9点以上です。

Beightonスコアは全身性関節過可動性の可能性をスクリーニングするための良いツールですが、顎、首、肩、手首、股関節、足首、足、指など、Beightonスコアで測定されない関節でも過可動性を持っていることがあります。このような場合、Beightonスコアにのみ依存するのは不十分です。体全体の多くの異なる部位に関節過可動性がある場合も、全身性関節過可動性として分類されることがあります。

HSD (Hypermobility Spectrum Disorder)の種類は何ですか?

HSDのタイプは、関節の過可動性のタイプに基づいて4つに分類されます。

  • 全身的HSD(G-HSD): 全身にわたる関節過可動性があるHSD
  • 末梢的HSD(P-HSD): 手や足に限定された関節過可動性があるHSD
  • 局所的HSD(L-HSD): 単一の関節または同じ領域の関節群に過可動性があるHSD
  • 既往的HSD(H-HSD): 現在の検査で全身性関節過可動性の証拠はないが、過去に全身性関節過可動性の既往歴があるHSD

HSD (Hypermobility Spectrum Disorder)はどのくらい一般的ですか?

HSDの実際の発生率は現在のところ不明ですが、一般的な状態であると考えられています。(残念ながら、まだ一般的に診断され治療されているわけではありません!)

HSD (Hypermobility Spectrum Disorder)はどのように管理されますか?

関節過可動スペクトラム障害(HSD)は体のさまざまな部位でさまざまな症状を引き起こす可能性があります。そのため、HSDのある人は、ケアを管理するために異なる専門分野の複数の医療行為の提供者が必要になる場合があります。HSDには特異的な治療法はなく、各人の症状を管理することで対応します。HSDのある人は非常に異なる症状を持ち、さまざまな管理戦略に異なる反応を示すことがあります。各人は、自分のニーズに合ったケアプランを作成するために、ケアチームと協力する必要があります。

HSD (Hypermobility Spectrum Disorder)はどのように診断されますか?

HSDは病歴と身体検査によって診断されます。その過程で、臨床医は同じ症状を引き起こす可能性のある他の状態を除外する必要があります。

HSDと診断されるためには、関節の過可動性が問題を引き起こしており、それが単なる無症状の特徴ではないという証拠が必要です。

これらの問題には以下が含まれます:

  • 関節の亜脱臼および/または脱臼
  • 関節の痛みと関節機能の喪失
  • 関節の損傷(例:軟骨の裂け)
  • 初期の関節変性(これが進行すると、著しい摩耗や骨関節炎に至ることがあります)
  • 軟部組織(靭帯/腱)の損傷と怪我
  • 再発性、持続性、または慢性的な痛み
  • 体の位置/動きに対する感覚の低下(固有感覚の低下)

HSDのある人によく見られるその他の問題には以下が含まれます:

  • 疲労
  • 自律神経機能障害
  • 頭痛
  • 消化器の問題
  • 不安障害

HSDのタイプを証明するための臨床検査や画像検査は存在しません。そのため、他の疾患などがその人の症状を引き起こしている可能性を除外することが重要です。なぜなら、それらの状態の管理方法が異なる可能性があるからです。

HSDの診断を受けるためには、以下の条件を除外する必要があります:

  • エーラス・ダンロス症候群のいくつかの型、特にhEDS(Hypermobility Ehlers-Danlos Syndrome)
  • マルファン症候群、骨形成不全症、ロイス・ディーツ症候群、スティックラー症候群、骨格異形成などの遺伝性結合組織障害
  • ループス、関節リウマチなどの自己免疫性リウマチ性結合組織障害
  • フラジールX症候群、歌舞伎症候群、ダウン症候群などの染色体異常
  • 多発性硬化症や筋症など、関節が不安定になる神経筋疾患

HSDと診断された人が、その後にループスなどの他の状態を発症する可能性もあります。この場合、その人はHSDとループスの両方の診断を受けることになります。これは、HSDの診断時にはその人の過可動性と症状に対する他に説明できる事項が存在しなかったためです。しかし、すでにループスの診断を受けている人が、関節の痛みや不安定性の症状を発症した場合、HSDの診断はされません。これは、その人の過可動性と症状には別の説明(この場合はループス)があるためです。HSDは、他の原因がその人の症状を引き起こしていないときにのみ診断されます。

HSDのある人の中には、他の遺伝性結合組織障害の特徴を持っている場合がありますが、既知の障害の診断基準には合致しないこともあります。たとえば、全身性関節過可動性と慢性の痛みを持つ人が、エーラス・ダンロス症候群の関節過可動型hEDS(Hypermobility Ehlers-Danlos Syndrome)の特徴である萎縮性瘢痕、妊娠線、ヘルニア、直腸脱などを示すことがありますが、2017年の診断基準には当てはまらない場合があります。このような場合、現在の基準に従って、その人はHSDと診断されます。ただし、その人が抱えている問題は、hEDSの診断を受けた人と同じように管理されます。

人の診断は時間が経つにつれて変わることがあります。なぜなら、症状が新たに現れることで、その状態の分類が変わる可能性があるからです。たとえば、子どもがHSDと診断されていた場合でも、その後に僧帽弁逸脱、妊娠線、萎縮性瘢痕、ヘルニア、直腸脱などの特徴が現れると、エーラス・ダンロス症候群の関節過可動型hEDS(Hypermobility Ehlers-Danlos Syndrome)の診断基準を満たすことになります。この場合、診断がHSDからhEDSに変わることになります。また、研究が進むことで過可動性に関連する状態についての理解が深まり、診断が変わる可能性もあります。

2017年にエーラス・ダンロス症候群が再分類され、関節過可動スペクトラム障害(Hypermobility spectrum disorders)が導入されました。関節過可動症候群(Hypermobility syndrome)(または良性関節過可動性症候群Benign joint hypermobility syndrome)は、もはや使用すべきではない古い診断名です。以前に関節過可動症候群と診断された多くの人は、現在はhEDSまたはHSDのいずれかのタイプに分類されています。

現在、HSDやhEDSのための決定的な診断検査が存在しないため、これらの2つの状態を完全に区別することはできません。一部の専門家は、HSDとhEDSが本質的に同じ医学的状態/疾患であり、スペクトラムの一部であると考えていますが、他の専門家は確信が持てず、また別の専門家はHSDとhEDSが異なる、明確に分かれた医学的状態/疾患であると考えています。

hEDSとHSDには異なる根本的な原因があり、お互いおよび他の障害とは本当に異なる可能性もあります。また、hEDSとHSDが共通の根本的な原因を持ち、実際には別の状態ではない可能性もあります。

すべての答えがまだ得られていないことに、苛立ち/落胆されるかもしれませんが、これは珍しいことではありません。医学の歴史は、知識の進展とともに診断基準の発展や同じ障害群内での状態の分離の例で満ちています。EDSおよびHSDの国際共同事業体(International Consortium)のhEDS/HSD作業班(Working Group)では、これらの医学的状態/疾患についての理解を深めるための研究を続けています。

現時点では、HSDとhEDSの管理の原則と方法は同じです。どちらの状態も認識、確認、評価、ケアが必要です。世界中の臨床医が、HSDとEDSの両方に対する管理戦略があり、これらの状態を持つ人々の生活を改善できることを知っておくことが基本的に重要です。

私たちは、2024年4月1日に「EDS ECHOサミットシリーズ: 関節過可動スペクトラム障害」のバーチャルイベントを開催することを嬉しく思います。このイベントでは、関節過可動スペクトラム障害(HSD)のすべての側面について、専門家によるプレゼンテーション、研究、管理情報が提供されます。包括的なプログラムには、以下のトピックに関するプレゼンテーションが含まれます:

  • 小児および青年期のHSDのタイプ
  •  動作療法とトレーニング
  • HSDにおける歯科および顔面痛
  • ライフスタイル戦略と自己調整
  • 自律神経症状への対処法

詳細を知る、登録する、または奨学金を申請するには、こちらをご覧ください。

Kindly translated by Marina at https://ehlersdanlosjapan.wixsite.com.

Sign up to The Ehlers-Danlos Society mailing list